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街の灯(令和4年4月号掲載)

更新日:2022年5月25日更新 印刷ページ表示

~ 街の灯 ~

 久しぶりにチャップリンの「街の灯」を観た。目の不自由な花売り娘に恋をして、その治療費を稼ぐために奮闘する浮浪者の物語。やっと手に入れたお金を彼女に渡すが、泥棒と間違われて逮捕されてしまう。数か月後、刑務所から出てきたボロボロの彼が目にしたのは、治療が成功して花屋を経営する娘の姿だった。待ちわびていた恩人が目の前にいても、彼女は気づかない。それどころか、みすぼらしい男に見つめられて、「彼、私のことが好きみたいよ。」と言って店員と大笑いする。そして彼にお金を恵んでやろうとするが、彼は恥ずかしそうに逃げる。彼女は彼にお金を握らせようとする。手と手がふれる。その時、彼女はすべてを理解する。「あなたでしたの?」
 そこで映画は終わる。史上最高といわれる珠玉のラストシーンだ。私は何度観てもそこで泣く。が、同時にこうも考える。貧しいながらも一生懸命に生きてきた彼女は人の痛みを誰よりわかる人間である。そんな彼女でさえ彼を「見た目」で判断してしまった。人の価値は決して「見た目」では決まらないことはわかっているつもりでいるが、果たして私たちは「見た目」で人を判断していないと言い切れるか。
 これは91年前にチャップリンが私たちに残した問題提起でもある。

 

四万十市人権教育・啓発講師 光内真也