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四万十川の漁法について
ゴリ漁
ガラ曳き漁(ゴリ)
チチブの稚魚 戦後間もない頃まで専業漁家の間で行われていたようであるが、現在では殆ど行われておらず、僅か1~2の漁家が操業しているに過ぎない。
漁獲の方法はサザエの殻を何百個も吊した荒縄の両端を各々人と舟で曳き、前もって適当な場所に設置した四ツ手網の方向に引き寄せて、ゴリを追い込む。貝殻を吊した荒縄の長さは、およそ50m程あり、これを上流から下流に向かって曳く。
操業期は2月頃から4月頃。
ノボリオトシ漁
流れの早い瀬に仕掛ける漁法で、流速を利用してゴリを通網で誘導し、そのかけ上がりの先端で強い流速に押され、トラップ付の魚取り箱にゴリを落とし込むというものであるが、この漁法については知事の許可が必要である。
ウナギ漁
ウナギのヒゴ釣り
ウナギは夜行性のため昼間は穴の中の隠れ家に潜んでおり、その中に針を取り付けた竹ひごにミミズやドジョウを餌にして、穴の中に差し込んで釣る方法である。
ウナギのズズグリ
ミミズを糸に通し、数珠状にしたものを竹の柄をつけた細長い鉄棒の先に縛り付け、洪水時の流れの中に差し込んでウナギを釣る漁法であるが、この場合鈎針は一切使わない。
ウナギのコロバシ
竹ひごで編んだ筒状の物や木製の筒状のもの、または、竹の輪切りにした筒などの片側にトラップを取り付け、残りの片側に取り出し口を設けた漁具で、餌は活きたミミズ、ドジョウ、ハヤ、エビ等を入れて一昼夜、川底に仕掛けておく。
ウナギのイシグロ
川底を30cm程掘り、グリ石を積み上げて人工的にウナギの住み家を築き、それに潜り込んだウナギを捕える原始的漁法。
ハエ縄漁
幹素(オモソ)再燃り32本に枝素(エダス)5号程度のナイロンテグスを4~5・おきに結び付け、これに鈎針8~9号を取り付ける。
ノハエ(ノハチ)の長さは約150尋(1尋=1.5m)程度で、餌はミミズかエビ、対象漁によっては、他の餌も使用するが、殆どの場合、夕方川底に仕掛け、早朝に取り込む。
ハエ縄(一本ハエ縄)
1.5m程の細い竹竿の端にナイロンテグス5号程度のものを2~3m取り付け、先端に鈎針8~9号を結び、餌はミミズか活エビで、本流に流れ込みの小川の岸のここぞと思うポイントに投げ込みウナギを狙うハエ縄漁であるが、主に少年達がアルバイト的に行った漁法である。
一日に50~60本も仕掛けておけば、多い時はウナギ籠の底が見えない程釣れる時もあった程である。しかし、70年代頃から始まったシラスウナギ漁のため、天然物のウナギが激減し、今では、この漁法が行われるのを見ることは殆どない。
ウナギ掻き
先端が4~5本の櫛状になった鉤型の鉄製の漁具である。
これは冬場、泥底に潜っているウナギを引っ掛けて漁獲するための道具であるが、近年は、この漁法は殆ど使われていないし、この道具も見かけなくなった。
アユ〈網漁〉
建網(火振り漁)、投網(トアミ)、なげ縄、地曳網〈釣り漁法〉オトリガケ(友釣り)、シャビキ(コロガシ)、シャクリガケ、ピンガケ。
スズキ、ボラ漁
スズキ瀬張り網
落鮎シーズンには、夏場上流まで鮎を追って遡上していたスズキが大群で降り始めるか、これを狙って、急流に杭を打って網を張り、流れに乗って落ちて来るスズキを待ちぶせて獲る漁法。
流し網漁
表層を遊泳する主にスズキ、ボラを獲ることを目的に使用する網で、型状は建網であるが、強い浮力の浮子によって沈垂を川底から浮かし水面から網が垂れ下がった状態で、流れにのせて下流に向かって流すものである。
現在では使用されているのを見たことがない。
棚網(ボラ)、トバシ網(ボラ)
この漁法は現在、四万十川では操業されておらず、知る者さえ僅かな人数ではないかと思われる。
この構造は独特であり、ボラの習性を利用したものである。主網の部分はナイロンモノフィラメント8号、5節、高さ6~8m、長さは長いものでは500mに及ぶものもあったようで、四万十川に於ける漁具としては最大である。
この主網の下部には当然沈垂が付いており、上流には浮子が取り付けられている。これだけならば普通の建網であるが、この浮子の片側に幅1.50~2mの棚網が取り付けられており、その端には浮子が取り付けられており、張り建てられると水面にこの棚網があたかも壁に取り付けられた棚のようになって浮かぶ。
巻き建てられた網の内側から追い込まれたボラは驚いて逃げ惑うが、網を目前にして飛び越す習性を持つ。
ボラは、主網を飛び越してこの網棚の上に落下し、待ち構えていた漁師が次々とすくい上げる。これに類似したものにトバシ網漁という漁法があるが、これは、沢山の舟を棚網と同じように網の片側に連ねて、魚群を巻く方法をとるのであるが、追われて驚いたボラが棚網よろしく舟の中に飛び込むという算段である。
先方から勝手に舟の中に飛び込んで来るのだから、すくい取る手間も要らず、のんびりとした漁法であるが、何しろ沢山の舟が必要な漁法であり、今日では、この漁法も過去のものなり、知る人もいない。
その他
柴漬け漁
1.5m程度の常緑樹の枝をひと抱え程に束ねて、それを川底に仕掛けて数日置き、ゆっくりと引き上げ大型のタモで抄い、ウナギ、カニ、エビ等を獲る原始的な漁法。
エビ玉漁
夏場の四万十川の風物詩とも言えるのんびりとした漁法で、直径15cm程の小さな糸で編んだ玉網で川底を徘徊しているテナガエビを伏せて捕る漁法である。
昔は沢山のエビがいたので、子どもでも真昼間に捕ることができたが、現在では乱獲によって川エビも激減しており、昼間はその姿を見ることさえ難しくなった。
カニウエ漁、テヌイエ漁
30cm径程度の亀甲状に編まれた竹籠をひっくり返した型状のものの口の部分に板で底を作り、竹籠の側面に高さ10cm、幅20cmくらいの入り口を作り竹籠で作ったコシタと言うトラップを取り付け、これを通過したカニが後戻り出来ないようにしたもので餌には雑魚を竹籠にくるんで内部に置き、石の重りを入れて、これぞと思うポイントに沈める。 一昼夜おいて、次の日に取り込む。
近年、化学繊維の漁網製のものが多量に安価に販売されており、竹製のカニウエ漁はついぞ見かけることはなくなった。
チヌウエ漁は、先述のカニ籠を一回り大型にしたようなものであるが、チヌウエの場合は小さな力で持ち上がるような微妙な設定が必要であり、誰かれ作られるようなものではなかった。この底板の内側の部分にカニを漬したものを泥とこね合わせ、3~4cmの厚さに貼り付け、緩流の水深のある所へ早朝に沈め、夕暮時には取り込む。