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人権コラム(令和元年8月号広報掲載)
人権さまざま 167
西部劇の王者ともいうべきジョンウェインが亡くなられた後広瀬隆著『ジョンウェインは何故死んだか』という本が出版されたと前号に書きましたが詳しい説明ができませんでした。
その頃(1977年から五年間)のハリウッド映画人363人の死因統計が出され、事故および原因不明死207人と最も多く、癌死61人、癌以外の病死95人、などとなっていて、スター達があまりにも早世したことがうかびあがっています。
その死亡記事をみた広瀬氏はスターの癌死が異常に多いことに気づき精緻な論証と推理で一つの結論に到達しました。当時アメリカが国を挙げて行っていた原爆実験が原因ではないかと考えたのです。それゆえネバダ、ユタ、アリゾナの砂漠地帯へロケをしたハリウッド撮影隊の調査をおこないました。ウェイン主役の「征服者」ロケ隊は長期間それらの砂漠地帯で撮影を行い、大量の砂に触れ、膨大な量の死の灰を浴び、映画に関与した人々の25%が癌で倒れていました。ハリウッド映画人の病名確定死因のうち、異常に多い癌死がこの死の灰に起因するのではないかと推論し、ジョンウェインもその犠牲者の一人であったとしました。きわめて説得力に富んだ内容です。
当時のハリウッド映画人の異常な癌死すべてを一元的に死の灰に結びつけるのは無理だとしても、「まさかそんな事が」などと気楽なことを言っていると、ジョンウェインにぶん殴られるぐらいではすまないだろうと広瀬氏は考えたのでした。
若者だけでなく全世界の憧れのスター達が、死の灰の犠牲になったとしたなら国家の大罪でもあります。
日本との戦いに勝利したのは、広島・長崎への原爆投下がきわめて効果的だったとするアメリカは、原爆の威力を是認し、戦後も核実験を繰り返しました。ビキニ環礁で、カナダ、アラスカで、どれだけの犠牲を払ったことでしょう。これが他の国々までも刺激して喰うや喰わずの貧しい極東の独裁国家までもが核を持ちたがっています。今や世界は全人類を何十回も殺傷する力を持っていると聞き及びます。どの国が地球最期を見届けるつもりでしょうか。スター達を滅ぼした原因がここにあるとすれば、も一度考え直そうではありませんか。
四万十市人権啓発講師
山本 衞