広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成29年7月号 

★人権さまざま★ 147

   わが国の近代ハンセン病政策が侵してしまった過ちは、どう考えてみても取り返しがつきません。二度と繰り返してはならないと、この病気や政策を見直すきっかけとなった「熊本地裁の判決文」を、何度も読み返しました。要約文でさえ何回も読んでみようかという気にはならないほど膨大な報告文です。

 しかしながら、何度読み返しても新たな怒りや悲しみに囚われてしまいます。こんなにも惨い政策が、何十年にもわたって継続されてしまったのか、どこかに救いの機会はなかったのか、愚かな政治による取り返しのきかない政策の歯がゆさに、唖然としてしまいます。

 今ではハンセン病は全く怖ろしい病気では無いと考えられ、現代医学では風邪を引いた程度にもならない病気だといわれています。かつて私共が聞かされていた、業病だとか、七代も続く遺伝病だとか、神仏の祟りだとかの風聞はまったく根も葉もないデマだったと決定づけされています。あのころ国中に(世界に)広げられていた風評を、改める為の医学的知識はありませんでした。それなのに国は、撲滅と称して、施設に強制収容し、患者は人間の仲間に入れて貰えない人権無視の政策を断行したのでした。施設内では断種、堕胎が日常に行われ、ひとたび入れば、牢獄以上の取り扱いを受けました。人権という言葉が一般的では無かったとはいえ、何の罪も無い人間を死刑囚以上の扱いをしてきたのです。

 国民に目を瞑らせ、差別の頂点に追いあげ、無実の罪で逮捕しても、碌な取り調べもしないまま施設内で死刑判決さえ行ったといわれます。

 ヨーロッパでは早くから医学の研究進歩の結果、ハンセン病は全く心配のない病気とされました。それなのに日本ではライ予防法なる法律を強行実施し、世界から何十年も遅れて漸くその法律を廃棄するに至りましたが、決断を遅らせたのは当時の厚生省の役人や医師達の予算獲得、既得権益を守ることのみに終始した結果だといわれます。

 専門職を与る者がそれだけの理由で全国民を欺きつづけた罪の重さに身震いします。熊本地裁に於ける判決で漸く国民は真実を知りました。

 わが国の医療行政を正したきっかけの判決文は機会を見つけて是非一読してみてください。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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