広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成28年1月号 

★人権さまざま★ 129

   先月「人権条約」について述べましたが、今回は「宣言文」を考えてみます。宣言も周囲に向かっての決意表明ですから、程度が低いとか守らなくてもいいというものでは断じてありません。

 わが国初の人権宣言といえば一九二二年(大正11)の水平社宣言と言われています。三月三日、京都の岡崎公会堂で、全国の被差別の人々の団体、「全国水平社」を結成しました。奈良県出身の西光万吉が起草した水平社宣言が駒井喜作によって読み上げられ採択されました。その冒頭の文章を掲載します。

 ―全国に散在する吾が特殊部落民よ団結せよ。長い間虐められて来た兄弟よ、過去半世紀間に種々なる方法と、多くの人々によってなされた吾らの為の運動が、何等の有り難い効果を齎らさなかった事実は、夫等のすべてが吾々によって又他の人々によって毎に人間を冒涜されてゐた罰であったのだ。

 そしてこれ等の人間を勦るかの如き運動は、かえって多くの兄弟を堕落させた事を想へば此際吾等の中より人間を尊敬する事によって自ら解放せんとする者の集団運動を起こせるは、寧ろ必然である。・・・・・・

 格調高い名文は「人の世に熱あれ、人間に光りあれ」で終わるのですが、宣言が発表されると国内はもちろん、米、露、英、仏・・・・・・等世界各国がトップニュースで取り扱ったと言います。もちろんアジアで初の人権宣言でもありました。世界人権宣言のような、法的な権利や手続きという形式はとってはいませんが、この宣言が今も私達を惹き付けてやまないのは、これが、人間の尊厳を求め、また、人間が尊敬される者であるからこそ差別が不当であるという、人権の最も根本的な原則を、法律の文章ではなく、被差別の立場にある人々の怒りや希望を、熱い情熱で表現しているからではないでしょうか。文中「勦る」という語がありますが、水平社宣言では「いたわり」を拒否しています。同情や憐れみでなく、全ての人が平等に権利を認め合い、自分自身が権利の主体者であると自覚することも意味する言葉だといいます。今に通ずる人権の本質を、的確で鋭い言葉で表現している当時の先人達に改めて敬意を抱いています。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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