広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成27年4月号 

★人権さまざま★ 120

   凶悪な犯罪の報道を聞かない日がありません。青少年犯罪も増加の傾向だとか、おそろしいかぎりです。中でも、私が注目したのは、2年前に広島県呉市の少年少女7人が起こした集団殺人です。この事件は成人一人を除く6人が少年院送りとなって一応の決着をみています。

 その際の判決文の表現をみて驚きました。「愛着障害」という言葉を使っていたからです。私がまだ教職にいたころ、親たちとの集会でよく使われた教育用語です。それが今、裁判官の口から伝えられるとは、全く思いもかけないことでした。

 愛着とは、ヒトや類人猿の乳幼児が生まれた直後から持っていると言われる本能で、母性的愛情を求めて行動(愛着行動)することをいう言葉です。親子関係の基本的特徴で、特定の一人の人物に向けられる傾向があり、後に学習して覚えたというものではなく、生まれながらのものといわれています。

 乳幼児は第一番に母親に愛着行動を示します。その行動は@吸う、Aしがみつく、B後を追う、C泣く、D微笑する、の五要素といいます。

 生まれたばかりの赤ん坊が、親によって十分な愛着行動が引き出されるような対応がなされると、親子間に安心できる愛着関係ができ上がるのです。子どもは親を安全基地として利用し、不安な時、危険な時、そこに戻る行動を繰り返すばかりでなく、その後の対人関係もスムーズに発達していくと専門家は教えています。つまり赤ちゃんのときの親子関係こそ何よりも大切な人格を作り上げていくというのです。広島の裁判官は、事件を起こした少年少女には、育て方をまちがえた親がいたという意味の判決を下したのだと、私は読みとりました。

 実際に親を失っても、祖父母や身近の人が母代わりをすれば問題はありません。ただ、その時機を失うと修正に時間がかかります。その年代に歪んだ人格の大人は、現実にも約3分の1はいるとも言われ、有名人でも、太宰治、夏目漱石、川端康成なども愛着障害だったと伝わっています。けれども文豪たちは、成人するに及んで、文学活動でそれを乗り越えてきたと言えます。この障害が簡単に犯罪化するかどうかは、人権意識を学び自分を高めることで乗り越えられるものと私は考えています。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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