広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成24年11月号 

★人権さまざま★ 91

   アメリカで生活するアジア出身の人々をまとめて「アジア系アメリカ人」とよんでいます。主に統計会社の表現のようですが一口にそういわれても、皮膚や髪の色、顔かたちは同じに見えても、同じ人種として括るには、違和感を覚える人も多いのではないでしょうか。それぞれ異質な歴史や文化、心情をもっているはずだからです。しかしながら、この国では、白人系のアメリカ人からまとめてさまざまの差別的扱いを受けてきたことも否定できません。なかでも「ヴィンセント・チン事件」は歴史を変えたといわれます。

 一九八二年六月二三日、チン青年は、デトロイトで結婚を四日後に控え、友人たちと居酒屋で独身パーティーを楽しんでいました。その時、二人の白人男性が話しかけてきて、やにわに声を荒げ、日本の自動車会社の成功を非難し始めました。「俺たちの仕事がなくなったのはお前らのせいだ」と、彼らは喚いて、卑猥な罵声を浴びせながら、チン青年の頭を、野球のバットで滅多打ちにし、頭蓋が砕け、二十七歳で死にました。

 男たちはクライスラー自動車工業の現場監督ロナルド・エバンズと彼の養子マイケル・ニッツでした。彼らは、事件は単なる居酒屋の喧嘩で一方にとって不幸な結果で終わったにすぎないと主張し、検察当局も認め、執行猶予三年、罰金三〇〇〇ドルの判決で終わりました。

 この事件は、「君たちはみんな同じに見える」ことの悲劇でした。(民族の違いは顔かたちだけでは解りにくいのがふつうです。外国で、日本人だと思い声をかけると蒙古人だったり台湾人だったりした体験を私でさえもっています。)

 中国移民の息子が、日本のオートメーカーと同一視された結果の出来事でしたが、「チンを忘れるな」の声は民族の違いを越えてアメリカ中にひびきました。

 アメリカでは今や中国が台頭し、新たな経済不況の一因にもなっているとも聞いています。反面、アジア系アメリカ人の発言力は政治、学会、ビジネスのいずれにも高い役割を担ってもいます。私たちは、「アジア人」としての新たな意識も一層重大であろうとチン青年事件を思い出しているところです。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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