広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成23年10月号 

★人権さまざま★78

   肉親の死亡届を出さないまま何年もたってしまっていたというニュースには、日本中がたまげてしまいました。まさかこの文明国日本にこんなことがあろうとは!

 杜撰きわまりない役所、恥知らずの遺族にただただあきれるばかりでした。

 こんなことが起こると、決まって言われる台詞に「昔はこんな事はなかった。」という言葉です。「だからいうちょるろう。今の日本はだめだと」それには誰もグーの音も出せずに黙り込んでしまいます。

 ほんとうに昔はこんなことはなかったのでしょうか。

 氏家幹人氏(歴史学者)が「文藝春秋」にその答えを載せています。結論は、昔もこんな不正がまかり通っていた、いやむしろ正々堂々と国の公認でもあったということのようなのです。

 武士がこの国を支配していた江戸時代。「武士は今時の役人より清廉潔白、庶民にいたっては人情に篤く、親や老人を大切にしたから、孤独死なんて無かった」と思いがちですが、一般的にいえば全くそうではなかったことが多かったといいます。「幕臣の中には、将軍のご恩をむさぼるように、家の当主が死亡しても、その死を隠し、病気保養中と偽って、従来通りの俸給を受け取っていた者がいた」と、旗本の長男、大谷木醇堂が書き遺しているそうです。

 これは特別なことではなく、三年、五年も続けられ、上司や同僚も当然のこととして、悪びれた風もなく死者の給料をむさぼりとっていたというのです。つまり「慣例」という名のもとに、幕府も見て見ぬふりをしてきたのでした。老中から小役人まで、組織的に馴れ合い、甘え合って、不正を慣例化させた。「武士の情け」「武士は相身互い」の互助精神がそうさせたとも思えるのです。だとすれば、「死亡を隠して年金を受け取り続けた現代の怪奇現象も、杜撰だとか、破廉恥と決めつけるのはどうであろうか」「それはこの国の『麗しき伝統』のひとつかもしれない。ああ、サムライ日本。」と氏家氏は文を結んでいます。これは皮肉ではなく、褒めコトバかもしれませんネ。

 いかが思いますか?。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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