広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成23年7月号 

★人権さまざま★75

   初めての場での講演ー中でも子どもたちに対面した際には、自己紹介をかねて次のように話をきりだしたりします。

「私は、ここに木を植えに来ました。……」彼らは不思議そうな顔をこちらにむけてきます。

「でも、その木は、街路や校庭にある木ではありません。皆さん一人ひとりの心の中に、木を、植えてもらいたいのです。キとは、ヤルキ、コンキ、ユウキ……などです。この木は油断をすると、弱虫という名の虫に食われてしまいます。そいつに負けないためには肥料が必要です。ナニクソという肥料をたっぷりとかけてやってください」
子どもたちのしだいに輝いてくる顔を見て私もシテヤッタリという心持ちで話を続けます。

―でもこの話は、私が独自に創ったものではありません。まだ若く、新進気鋭?の社会教育担当になりたての頃、神戸市の、足立五郎兵衛先生から教えられたものでした。

 それ以来、事あるごとに私が考え出したかのような顔をして、子どもたちに話しては人気度を上げてきたものです。

 退職前の学校の新任挨拶としてもつかいました。

 赴任して十日間ほども経った日でした。廊下で五年生になり立てのMくんとすれ違いました。彼は少し恥ずかしそうに、モジモジした後、思い切ったように話しかけてきました。
「ぼくはこの間の先生のお話を帰ってからお母さんに話して、二人で考えました。いままでのぼくは、心や体に変な木を植えてきました。病気という木です。これからはあの木を引っこ抜いて、ゲンキの木に植え替えたいと思います。」

 私はこの子を抱きしめたい、そんな強い衝動に駆られたものでした。

 海辺に育っていても、海で泳いだこともない子どもたちに、遠泳大会をさせました。

 彼は最初、浮き輪をもって海に入りましたが、途中からそんなものはかなぐり捨てて素手で何百メートルかを泳ぎ切りました。

 今はすっかり大人になって、社会の荒波を力強く遠泳していることだろうと想っています。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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