広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成23年3月号 

★人権さまざま★71

   大晦日から元旦にかけての大雪に、屋外に出ることもなく、小林一茶(一七六三〜一八二七)の俳句を読みふけりました。

 一茶は、信濃の国(現在の長野県)の人で、その作品は戦前から現在まで、小中学校の国語教科書にも載せられ、多くの人々に親しまれています。

・痩蛙まけるな一茶是にあり
・我と来て遊べや親のない雀
・やれ打な蠅が手をすり足をする

 これらの句から、一茶のやさしくて愉快な人柄がうかびあがってきますが、実はこれが彼のすべてではありません。

 俳聖とまでいわれた芭蕉が生涯によんだ俳句が千句、蕪村は三千句、一茶は何と二万句もあるそうですが、どうしてか一茶は一段低いか、無視された存在とも言われています。わが国では、昔から花鳥風月をうたえば芸術性が高いと評価されていますが、一茶の俳句には、他の人が目を向けたことのない題材が数多くよみこまれています。

 徳川封建体制の下にあって、権力者はもちろんのこと、宗教人でさえ差別や蔑視を加え続けたなかにいて、社会の底辺に生きる人びとを人間として扱い、黙々とうたいつづけたのが一茶でした。

・非人寺に桜まじまじ咲にけり
・隠亡のむつきほしたり蓮の花
・番丁やもやひ番屋の小夜時雨

 このような、あまりにも人間的なうたいっぷりが、高名な批評家たちに嫌われてきたように思われます。蚊、蠅、蛙、蚤、虱、乞食、非人、貧乏人……をうたいつつも、領主、大名、はては将軍様までも笑い飛ばす生き方は、まことに痛快といわざるをえません。

・何のその百万石も笹の露
・夕不二に尻を並べてなく蛙
・蚤の迹かぞへながらに添乳哉
・陽炎や敷居でつぶす髪虱
・乞食子や膝の上まで今朝の雪
・御仏や乞食丁にも御誕生
・君が代は乞食の家ものぼり哉
・大江戸や犬もありつく初鰹
・屁くらべや夕顔棚の下涼み

 あげていけばきりがありません。権力や権威に諂うことなく、一茶の注ぐまなざしは庶民の代表の眼そのものです。二人とはいない俳人魂の持主です。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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