広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成22年10月号 

★人権さまざま★66

   最近では、人種とか○○族という表現をしなくなりました。でも世界各地には、今もその実態は遺っていて、紛争の火種ともなっています。今回は二つの悲劇の事例を報告いたします。

 一九九〇年以来、ルワンダ、ブルンジ、コンゴなどでは、フツ族、ツチ族という二種族間の抗争で、百万人を越える死者を出しているといいます。それぞれが相手側を「皆殺し」のやり方だと非難し合い、加害者と被害者を区別することは不可能です。ルワンダのムランビの町では、フツ族によってツチ族の住民が皆殺しにされた時、逃げ込んだ丘の上の工業学校で、ふたたび、数千人もの人々が殺されました。ツチ族はその学校を、歴史記念館としてそのまま展示公開し、相手族への復讐を誓い合い、憎悪の連鎖は、断ち切れそうもありません。それに加え、両族には、大国の支援も絡み、問題をより一層複雑化しているといわれています。

 一方、インドの北部、ウッタル・プラデシュ州の小さな砂漠の村では、二〇〇三年三月の早朝に事件が起きました。

 グッダンという若者が、ビムラという女の眠る部屋に印度栴檀の樹を伝って忍び込みました。二人はひそかに愛し合う仲だったのですが、寝台の軋む音に目を覚ましたビムラの兄たちは、鉄の棒で二人をめった打ちにし、二人は殺されてしまいました。グッダンはヒンズー教徒、ビムラはイスラム教徒でした。それだけではなく二人は、カースト制(身分制度)では、主と従の関係で、グッダンは、ビムラの家の農仕事を手伝ういわば農奴だったのでした。

 宗教の違い、階級の違いの上に、村で暮らす掟を破ったというのが兄たちの言い分でした。

 ーこのように血縁、地縁、さらには、宗教や因習が絡む人々の関係は、「村」という仕組みではくくりきれない事柄が潜んでいて、「ムラ」と表記されることが多いようです。

 「ムラすなわち族」とされる、おくれた意識をもつ地域社会が、地球上にはまだ数多く存在し、紛争や戦争を引きおこしている現実があるようです。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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