広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成22年9月号 

★人権さまざま★65

   戦争の時代を体験し解ったことは、戦争は、「正義」という美名を掲げ、人間を痲痺させてしまう怖ろしさをもっているということです。ほとんどの人間が判断を狂わせられ、我こそは最高の善を遂行しているのだと思い込まされてしまうのです。

 第二次世界大戦前夜、日独伊「三国同盟」が締結されたとき、私は小学生でした。学校でほめ讃えるヒットラーやムッソリーニなどの英雄譚に胸を高鳴らせたものでした。負けてみれば、何のことはない、彼らは戦争犯罪の張本人だったのです。多感な成長期に叩き込まれた正義感に裏切られた私達世代のトラウマは、今も消えずに、歳と共に増大しています。そのせいか、正義ということばを聞いただけで、眉唾だろうと疑ってみる習慣が身についてしまいました。

 世界の敵といまだによばれるドイツのヒットラーの罪悪の一端を述べてみたいと思います。 若い頃の彼は美術を志す青年でした。しかし彼の作品はあまりパッとしなかったようです。政治家に転身した後、唱えたスローガンは「文化を清潔にしよう」というものでした。
 
ー20世紀のヨーロッパを毒しているものが三点ある。第一は共産主義思想、次はユダヤ人、三つめが前衛アートだと力説しました。現代感覚からすれば、何故毒なのか理解できません。

 民族浄化の名のもとにユダヤ人の皆殺し政策を実行しました。ホロコーストと表現される悪魔の所業です。アウシュビッツに今も遺る地獄の跡には誰もが鳥肌のたつ思いがします。

 新しく台頭した美術家やその作品を徹底的に弾圧しました。シャガールやクレーという名だたる画家の作品を競売に掛け、一枚一円で売り飛ばし、他は、焼き尽くすという行為に走りました。そんなことが、正義の名目で実行されたのです。

 翻って現在でも、世界では、神の名を唱えながら、たった一つしかない自分の命さえも犠牲にする、自爆テロのニュースがあとをたちません。死ねば全てが終わりです。人類はいつまで、そんなことを、繰り返すつもりなのでしょうか。

※トラウマ:心的外傷
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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