広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成22年7月号 

★人権さまざま★63
   友人や知人に会うと、言い合わせたように、年をとってしまった挨拶を交わす年齢になってしまいました。血圧はどうぜ?腰は? などと話した後で、「もうどうにもならんねや」、で終わってしまいます。なんとも情けない話です。
 新しいことに挑戦することもためらいがちになり、周囲もまた、「その年でそんなこたぁやめたや」とブレーキをかけてきます。人間は、いつからでも、何に対しても、向かっていかなければ、と思うのですが…。
 最近、とても感動的な生き方をしている人を知りました。
 ー柴田トヨさん。九十八歳。初めての詩集『くじけないで』を出版したところ、プロの詩人顔負けのベストセラーになりました。
 トヨさんは裕福な家庭に生まれましたが十代の頃、家が傾き、料理屋に奉公に出ました。三十三歳で調理師と結婚、子どもも一人。平成四年夫と死別、現在は宇都宮でひとり暮らし。踊りが趣味だったのですが、足を痛めて出来なくなると、息子の勧めで詩を書き、産経新聞に投稿、認められて詩集になったということです。その中の「秘密」と題した作品、全文を紹介します。

  私ね 死にたいって
  思ったことが
  何度もあったの
  でも 詩を作り始めて
  多くの人に励まされ
  今はもう
  泣きごとは言わない
  九十八歳でも
  恋はするのよ
  夢だってみるの
  雲にだって乗りたいわ

 なんとも爽やかで勇気を与えてくれる詩だと思いませんか。
 難しい理屈をこねたものでもなく、誰にでもわかる詩です。
 六十歳で初めて詩を書いたそうです。いなり寿司や里芋が好き、長谷川一夫が好き、歌謡曲が好き、夢は自分の詩集が翻訳されて世界中の人に読んでもらうことといいます。
 素敵なトヨさんにあやかりたいと思うこのごろです。

 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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