広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成21年10月号 

★人権さまざま★54
   最近発刊の『差別と日本人』(角川書店発行)という野中広務と辛淑玉の対談集を読みました。既に政界を引退された野中さんに、在日朝鮮人の辛さんがさまざまの質問をこころみた本です。

 野中さんといえば、町会議員をきっかけに町長、京都府議、京都副知事を歴任し、衆議院議員、内閣官房長官、自民党幹事長、等々、輝かしい政歴の持ち主ですが、京都府内の被差別部落出身者でもあります。権力の中枢にまで上りつめた人の栄光と苦悩を、包み隠すことなく語っています。一方の辛さんは、野中さんより30歳以上も若い女性ですが、在日やいじめ問題に取り組む気鋭の活動家でもあ
り、容赦のない言葉で野中さんに問いかけています。

 そんな中から、心に残った文を抜き書きいたします。
「差別とは、いわば暗黙の快楽である」「時の権力は、権力に不満が集まらないようにするためには、差別を放置するだけでいい。そうすればシモジモ同士の争いが続く。」「差別される側は、差別の理由を求めてさまよう。その理由をなくせば差別されなくなると考えるからだ。しかし、差別するための理由はいくらでも付け足せる。結果、自らの努力ではどうにもならない状況が作り出され、多くは無力感を植えつけられていく。」などの核心を突く差別問題を語った後、こんな話もあります。「野中やらAやらBやらは部落の人間だ。あんなのが総理になってどうするんだい。」と大笑いした首相経験者もいたそうです。国会内でさえこんな発言がまかり通る差別の恐ろしさに、背筋を寒くさせました。

 阪神大震災で部落解放同盟の会館は無事で大勢の人々の避難場所となり、配給物資を入れる段ボール箱には「解同」の文字入りを使用しました。炊き出しのおにぎりを作り、何日も入浴できない人々をピストン輸送で運びました。ボランティアに精出した被差別地区の人たちは、「おにぎりを食べてくれるだろうか」「部落の風呂を嫌がるのではないか」と心配しながらの活動であったともいいます。

 そんな差別の現状に歯がみしながら読みながら読み終えたことでした。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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