広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成20年4月号 

★人権さまざま★36
    私たちの世代には幼稚園も保育園もありませんでした。近所のせいぜい百メートル四方の世界がすべてといった状況でしたので、小学校への憧れはとても強いものがありました。それと同時に何よりも見知らぬ世界へ飛び込む不安が日増しに募っていったものでした。兄や姉、先輩たちは学校の様子をあれこれと教えてくれたものです。

 「アコの子らは凶暴な者ばっかり」「こっちゃ側はクジくるけん気つけよ」。そんなことを言ってくれた後しめくくりは、「なんと言うたち、うちらぁの子が一番」とみんながいうのです。他部落の子は警戒し、頼れるのは自分たちの部落、そんな考え方が身について入学の身構えをしてしまいました。

 入学して何日も経たないうちに、はてな?と思うことにぶつかります。凶暴なといわれた地区の子にもとてもやさしい子がいました。一番いいと言われていたうちの地区の子にも、悪ガキはいたのです。見ると聞くとは大きな違いがあって一年生ながらに驚いたことを今も憶えています。

 少年期から青年期にかけて、不思議でならなかったのは行く先々で、イヌ神、サル神、ヘビ神などと呼ばれている一族がいたことでした。この一族たちは「気をつけたがいい」とわざわざ親切顔で伝えてくれる人も現れたりしました。教え子の中にもいましたので注意をして観察しましたが何の変わったところもなく何度も拍子抜けしたことでした。結局、後になってみて告げ口する奴こそおかしかったのだとわかったのでした。

 今でも時々耳にすることは、「大体、アコの人らぁはあんなもんばっかり」という表現です。

 同じ親から生まれた兄弟でさえ、同じ人間はいない。似たところもあればまるっきり違う部分も多いはずです。それを十把一絡げにして「あの地区」と決めつけてしまったことから逃れられない心をかかえている人たちが居るのです。ずっと昔、まちがって教わった同和地区のことも、いまだにそのまんま言いふらしている人もいると最近聞かされました。もうたいがいでそんな人間からは早く卒業できないものでしょうか。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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