広報しまんとコラム 「人が人らしく」  平成18年8月号 

★人権さまざま★16
   民話研究家の山中正義さんは土佐清水市竜串部落に伝わる民話をまとめ、『部落に伝わる昔話』として出版した人です。その中の「魚の話」を紹介しますと…。
 ―昔というても昔も昔、海ができて魚が泳ぎ始めた頃のことじゃそうな。まだ互いに馴れちょりゃせんし、気心も知らんもんじゃけん、ちょっとしたことが元でバンドウとゲンナイが大喧嘩したそうな
 何というても一貫五百も二貫匁(約7.5キロ)もあるバンドウと、ウマメの葉っぱばあしかない小んまいゲンナイじゃけん、到底こたやあせん。ゲンナイは隙をみて逃げて、岩の割れ目にかくれて見よると、バンドウが、うろうろ近寄ってくるがを見定めちょいて、力一ぱい小石をぶっつけたそうな。それがたまるかバンドウの額口に当たって後ろ向きに、はねくり返やるばあことうたと。
 ゲンナイは後も見るもんか逃げてもんて、お母ゲンナイに、「今日はバンドウに石をぶっつけちゃった。図体ばっかり太いかと思うて偉そうなこと言いよるけん、今日こそことうつろ」と自慢たらたら話したら、お母ゲンナイが、「わりゃ、耳にタコができるばあいうちょるに。太い者には相手になるなと。今日こそ許さん」と、ひっつかまえられて太いモグサをすえられたと。モグサの跡が痛うてふらふら泳ぎよると偉い神様に出逢うたが挨拶もできざった。「こんまいゲンナイの分際で挨拶もせん」と怒って、頭が下がるようにと石の重しを頭につめ込うだそうな。それ以来ゲンナイの頭の中には石、背中にモグサの跡ができ、バンドウの額口には太いこぶが残っちょるそうな。(紙面の都合で原文改作)、―このお話で、バンドウを強者と見て、ゲンナイを弱者とみるか、あるいはその逆の見方をするか、人間の世界に置き換えてさまざまな読み取り方が可能だと思います。今よりずっと差別
の厳しかった昔、魚や動物などにこと寄せて、喜怒哀楽を語り伝えてきた地区の人々の心の糧を、山中さんは生涯拾い集めました。小さなお話の中に大きな歴史を伝える沢山のお話を残して、今から二年前にあの世に旅立っていったということです。
 
   四万十市人権啓発講師   
         山本 衞
 

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